二宮君はもちろん演技力が若手の中では抜群で、すごく勘もいいんですが、彼の場合は努力するんですよ。ただ照れ屋だからそのことを言わない。でも、何かのきっかけにそれがわかるわけですよ。
今回は自閉症という難しい役の演技と、マラソンを走るという二つのハードルがありました。実際の自閉症の青年の人たちと会ってもらったり、自閉症に関する資料を渡したりするわけです。で、「そうなんですか」とさりげないんですが、撮影中に「あれ、こういうの自閉症の人はやらないんだよね」とかポロッと言う。それは僕が渡した資料の中にはなかったはずのことなんです。で、これは絶対に自分で他の資料とかを読んでるなというのがその時にわかりましたね。
それから、瀬古さんと瀬古さんの右腕という方にマラソンのコーチをお願いしたんですが、ある時にコーチの方が、二宮君の走りが変わったと言うんですよ。これは相当走りこんでますよって。で、コーチの方がさりげなく聞いてみたら、夜中の2時くらいに走っていると。びっくりしましたね。なぜそこまでやるのかと聞くと、「監督の期待に応えたいから」と。自閉症の専門の方にも現場に来て頂きましたが、彼の演技には舌を巻いていました。声のトーン、顔の表情、手の動き、なおかつ走るという。それを見て、先生は「ダスティン・ホフマンよりすごい」とおっしゃって。素質がある上に、すごく努力する。そこが二宮君なんですね。
撮影が終わった時に、自閉症をどういうふうに演じたのかと尋ねたのですが、「風を感じるようにした」と言うんです。撮影前に会った自閉症の青年たちの中に、指の動きが特徴的な青年がいて、二宮君はその彼に注目していたんですね。指で風を感じようという・・・。で、きっとそういう演じ方というのは、正解なんだろうなと思うんです。頭で考えて組み立てていく演技の仕方もあるけれど、彼はなりきって演じる。自閉症を演じるということからも、彼のやり方は正しいと思うし、役者が演技をするという意味でも、非常につかんでるなと僕は思いましたね。